2006年5月5日金曜日

『草刈る人』(玉村豊男)……日本農業の実態はこれでわかる



おフランス留学帰りの東大仏文卒エッセイストの玉村豊男は、今や5000坪の田畑を所有するれっきとした地主。作男を使って悠々自適の生活だ。その農村生活をエッセイに書いてまた儲ける。でも質の高いエッセイであることは事実。

この本を読んだ:
草刈る人
草刈る人玉村 豊男

新潮社 2001-09
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日本の農村と農業を知るにはとてもいい本。さすが仏文卒。日本農業の本質的なところをよく書いている。

玉村豊男は文化活動にいろいろ忙しい人なので、この長野県の農園には常駐はしていない。だから耕したり作業をするのに作男(ほとんどは若い女性らしいから作女か)を7〜8人、常勤で雇っているとのこと。それに加えて休みになると「俺も農作業をしてみたい」という知人がわんさかやってくるので、これらの「季節労働者」をただで使っている。かなりあくどいな。

5000坪の農地を持つことで「ようやく平均的な農家に成れた」とのこと。たかが1・6ヘクタールだろう。飛行機を使って種を蒔くのが常識となっている国際スタンダードから見れば、極度に生産性の低い零細農家そのもの。それで作男(作女)を7〜8人雇えるだけの収入があるというのは、どう考えてもおかしい。保護政策により日本の農産物価格が異常に高いので、こうした経営が成り立つのだ。考え込んでしまった。玉村豊男は「農業とは一人で完結する作業で達成感がある」というが、いかにピン工場の生産性が分業によって飛躍的に向上したかを書いたアダム・スミスの「国富論」を読み直すべきじゃないか。

それにしても「ただでもいいから農作業をしたい」という人たちがこんなに多いとは驚き。昨今のロハス・ブームに躍らされている人が多いということ。おかげで零細地主でも左うちわ。このままでは、日本は340万人の地主有閑趣味階級を抱えることになる。

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